サンゴの白化(はっか)と死
様々なストレスによって、サンゴと褐虫藻の共生関係は常に脅かされています。
今回は、サンゴにかかる様々なストレスをあげ、それによって引き起こされるサンゴの白化現象、さらにはサンゴの死についても勉強していきます。
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写真右側は健康、中央部分は白化しており、左側は完全に死んで藻がついてしまっている。 |
サンゴに対するストレス
ストレスといっても、一般に我々が使うストレスとは違ったもので、サンゴの生存に直接的にかかわるマイナス要因のことを指します。
・物理的破壊
サンゴに最も大きなダメージを与えるのは、物理的な損傷、破壊です。これには主に台風などの波浪や他の生物によるものがあります。
・光
日光は、褐虫藻と共生しているサンゴにはかなり重要な要素です。海水の汚濁等による光量の減少は言うまでもなく、強すぎる日光もまた、サンゴ(と褐虫藻)へのストレスとなります。
紫外線によるダメージを防ぐため、浅瀬に生息するサンゴの中には紫外線吸収物質で体表を覆っているものもいます。一部のサンゴにブラックライトを当ててみると鮮やかに光りだすのも、このためであると考えられます。Yシャツが白いのと同じ原理ですね。
・温度
サンゴ礁海域の平均水温は、年間を通して25度程度と安定しています。実際、サンゴが最も好む水温は27度付近で、それより5度以上高い、または10度以上低いと大きなストレスとなり、白化(後述)の原因となることもあります。
その他にも、排水中に含まれる高栄養塩や農薬、大規模な淡水流入による塩分濃度の変化等がサンゴのストレスとなります。
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浅場に色鮮やかなサンゴが多いのも、紫外線を反射する物質を作っているためであると考えられる。 |
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水流によるストレス緩和効果
水流によりサンゴのまわりの海水が適度に循環すると、多くのストレスが緩和されます。
原因はまだはっきりとは分かっていませんが、水温と光に対するストレス耐性が、水流に比例して上がっているという実験結果も出ています。(Nakamura,van Woesik,2001)また、白化直後の回復率も水流に比例していることが分かっています。
サンゴの白化と死
サンゴが様々なストレスにさらされると、褐虫藻がサンゴから排出されてしまいます(サンゴがはき出すのか、褐虫藻が出ていくのか、褐虫藻がサンゴの中で死んでしまうのかははっきりわかっていません)。
もともとクラゲのように透明な体であるサンゴから褐虫藻がいなくなると、鮮やかな色は失われ、下の骨格が透けて白く見えます。これがサンゴの白化現象です。見た目はとても美しいのですが、サンゴにとっては危険な状態です。
白化=死と勘違いされがちですが、白化した状態からでも、うまくいけば褐虫藻が再びサンゴに帰ってきて、息を吹き返すことができます。しかし、褐虫藻の提供してくれる栄養を失ったサンゴはそう長くは生きられません。いわば白化はサンゴの瀕死の状態といったところでしょうか。
(白化してから生きられる期間は、種によってまちまちで、はっきりはわかっていません。)
1998年には、世界的なサンゴの白化が起こりました。この時に沖縄では60パーセント以上のサンゴが影響を受けました。
この大規模な白化現象は、エルニーニョ・南方振動(貿易風の弱体化に伴い海流が変化する現象。またそれによって引き起こされる気候の変動)によるものであるとする見解が一般的ですが、はっきりした原因はわかっていません。
さて、なんだか硬い感じになりましたが、紫外線対策として作っている物質の働きにより蛍光を呈しているということを知り、はじめに思い浮かんだのはオワンクラゲとGFPでした。
どうやらオワンクラゲは紫外線対策として蛍光タンパクを作っているわけではないようです。生殖腺だけではとても防ぎきれませんしね。そもそも褐虫藻と共生関係にないか。
また別の機会に「光る生物たち」について触れたいと思います。
次回はサンゴの産卵について勉強したいと思います。
それにしても「白化」と「褐虫藻」は変換が出なくて大変でした。。。