もぐんちゅとは??

潜人(もぐんちゅ)
ダイビングサービスやファンダイビング、漁などでスクーバ(潜水器具)を用いて海に関わっている人。

一言でいうと、潜ってるひとです。

勝手に作りました。造語です。

ちなみに、ご存知だとは思いますが、沖縄方言で「海人(うみんちゅ)」は漁師のこと、「島人(しまんちゅ)」は地元民のことです。

2010/09/26

サンゴって何者?参考文献等

今回参考にさせていただきました書籍やサイトです。


美ら島の自然史―サンゴ礁島嶼系の生物多様性
琉球大学21世紀COEプログラム編集委員会
東海大学出版会






Wikipedia free encyclopedia
URL:http://ja.wikipedia.org

日本サンゴ礁学会
URL:http://wwwsoc.nii.ac.jp/jcrs/index.html

WWFjapan
URL:http://www.wwf.or.jp/

財団法人沖縄科学技術振興センター
URL:http://subtropics.sakura.ne.jp/

サンゴって何者?(その4)完結編


現場から見たサンゴの生態と久米島の海


今回は、記事を書くにあたって実際に海に触れているダイビングショップのスタッフさんから聞いた話を、私なりにまとめて書きたいと思います。


海中から見上げた太陽とイソバナ


サンゴの保護の重要性とは

サンゴや自然の保護に限ったことではありませんが、それを学問としてみている人と仕事(または生活の手段)としてみている人の間には大きな隔たりがあります。私は、サンゴについて勉強すると同時に現場の声を聞くことで、実際に起こっていること、現場の人が考えていることを肌で感じることができたように思います。

テレビなどのメディアで多く取り上げられるサンゴの保護活動ですが、あるスタッフの方によると、果たしてそれ自体が正しいものなのか、疑問に感じることがあるそうです。
サンゴを捕食するとして駆除活動の対象となる、オニヒトデやレイシガイダマシなども、環境の変化によってその数の変動はあるものの、もともと海にいたもので、生態系の一部を構成しています。サンゴを保護したいというヒトのエゴによって悪者扱いされ、駆除されているという考え方もできます。
また、サンゴの白化、死の主な原因とされる海水温の上昇も、人為的要因が引き起こしているものなのか?と考えると、果たしてこれらが意味のあるものなのかと思ってしまうこともあるようです。

活発な保護活動が行われている一方で、イカリ等によるサンゴの障害、ダイビング中のサンゴへの破損やその他のダメージなど、中には保護意識の低い人がまだまだ多いのが事実です。

世界的なサンゴの白化現象から12年。初期の活動によって回復しつつあるサンゴの、保護の必要性、重要性、具体的な活動も含めて今一度考え直すべき時期にあるのかもしれません。



サンゴの産卵は月が鍵なのか~生き物の狡猾さ~

サンゴの産卵を取り上げるテレビ番組や書籍など、ほとんどのものでは、私が書いたように満月の前後の大潮にいっせいに行われると表現されます。

しかし、長年サンゴの産卵の予想される時期にナイトダイビングをして、観察をしているスタッフの方によると、最も重要な要素は海水温であるだろうということでした。 実際に大潮付近を狙って観察してみてもなかなかサンゴの産卵に立ち会えず、海水温が一定(種によりまちまち)温度から上がる時を狙うと産卵が起こることが多いようです。また、場所によっては一体ののサンゴがいっせいに産卵をし、海水面が卵(バンドル)でいっぱいになるところもあるそうです。これは、98年の被害後定着し、成長したいわゆる「同級生の」サンゴたちが多いと考えられる海域に見られるそうです。

グレートバリアリーフで見られるというサンゴの一斉産卵も、もしかしたらこれと同様に、大昔の大規模なサンゴの死滅が一帯に大量の「同級生」を作った結果なのかもしれません。


その他にも、海水温の変化は海の生き物に様々な変化をもたらします。

たとえば今ではすっかり有名になったクマノミの仲間も、一定の温度から水温が上昇してくると、コロニーで最も強い個体が母、2番目に強い個体が父となり、子孫を残します。ちなみにクマノミはコロニーで最も強い個体がメスとなり、その他はオスです。メスが死ぬとそのとき一番強いものがメスに性転換します。母は強し。ですね。。

ダイバーの間で「サロンパス」というあだ名をもつスミレナガハナダイも、海水温の上昇に伴って産卵をするといわれています。さらに面白いことに、この魚は放精放卵の後、他のオスの精子がかかった恐れのあるもの、精子がうまくかからなかったものを食べてしまいます。スミレナガハナダイの社会はクマノミとは逆で、一番強いメスがオスに性転換し、ハーレムを作って生活しています。雌雄で色や模様が大きく違うことから、しばしば切り替わり途中の「オカマ(オナベ?)」を見ることができます。

「サロンパス」スミレナガハナダイ(オス)
スミレナガハナダイ(メス)

 
全ての生物にとって、最も重要な目的は「子孫を残すこと」です。その目的達成のために、生き物たちは時に狡猾に、様々な工夫をして生きてきたのだと思い知らされます。


4回にわたって、サンゴとは何者なのか?という疑問を(度々脱線しながら・・・)考えてきました。 サンゴの産卵の写真が撮れなかったのが心残りですが(一度見た事はあるのですが)今回はこれくらいにしておきたいと思います。


次回からは生き物の「色」について勉強したいと思います。魚はなぜ銀びかりしているのか?熱帯魚はなぜきれいなのか?イカ、タコはなぜ自在に体色を変えられるのか?あたりを取り上げたいと思っています。

2010/09/19

サンゴって何者?(その3)

サンゴの産卵、月の周期を利用する生き物たち

今回は、サンゴの生殖について少し触れた後、月の周期をうまく利用している生き物についても少し勉強していきます。



サンゴの生殖
サンゴは、無性生殖、有性生殖の両方で増殖します。
有性生殖とは、精細胞と卵細胞の融合によって起こる生殖です。ほとんどの生物が有性生殖をおこなっています。
無性生殖とは、一部の生物で行われている、遺伝子のやり取りなしの生殖(多くは分裂)です。

サンゴは、普段は骨格の成長に伴い増加する表面を覆うように分裂を繰り返しています。つまり、サンゴの表面は一個体のクローンで埋め尽くされていることになります。(自分の分身で周りを埋め尽くすなんてあまり真似したくありませんが。。。)

 しかし、多くの種では年に一回(または数回)、精子と卵子が入ったバンドルと呼ばれるカプセルを一斉に放出します(後述)。水面に上がっていったカプセルは波の力ではじけ、近くのカプセルの精子や卵子と受精します(カプセル内で受精が起こることはありません)。
 こうしてできた受精卵は、成長してプラヌラ幼生という状態になります。また、体内で受精させた卵を幼生の状態で放出するサンゴもいます。いづれも、その後数日から長いもので数カ月ほど、プランクトンとして海中をさまよった後着底し、海水中のカルシウムから骨格を作り始めます。

 サンゴたちはこのようにして次の世代に子孫を残していくのです(無性生殖による分裂を繰り返すサンゴたちには寿命というものが存在しないのですが)。



サンゴの産卵

サンゴの産卵は、多くは満月の前後(大潮)の夜に一斉に行われます。
 より多様な遺伝子を求めた結果として、満ち引きによって遠くまで流される大潮の日が選ばれるのは納得できますが、サンゴたちがどうやってそのタイミングを知っているのか、どうやって個体間で産卵を同期しているのかはまだはっきり分かっていません。
 沖縄では、一般に海水温の高い南側から順にサンゴの産卵が起こりますが、オーストラリアのグレートバリアリーフでは満月の2,3日後に数百種類のサンゴが一斉に産卵するという現象が観察されます。これらについても、引き起こされる要因や同期の機構などは明らかになっていません。




月は27日の周期で地球を公転し、29.5日の周期で満ち欠けを繰り返しています。これによって海上では大潮、中潮、小潮、長潮、若潮、中潮、大潮という潮汐周期を繰り返します。月によって生み出される、この周期を利用している生き物はたくさんいます。


 多くのウミガメは、満月の夜、砂浜に上がり穴を掘って産卵します。
ハッチアウト(孵化)は卵が産み落とされてから約60日後の深夜に起こり、卵の殻を破った子ガメたちは満月のあかりに向かって進んでいきます。満月がちょうど海のほうにある深夜に、そのタイミングを知っているかのようにハッチアウトは始まります。

 しかし、明るいほうに進んでいく子ガメたちは、砂浜の近くに満月より明るいもの(街灯など)があると、そちらに進んでしまいます。間違った満月を目指してしまった子ガメたちは、海にたどり着くことなく、やがて力尽きてしまいます。

 私は実際に(観察されている方の指導のもと)ハッチアウトに立ち会ったことがあります。深夜3時ごろから孵化が始まり、1時間ほどかけて子ガメたちは海へと旅立っていきました。



明るい方に向かっていく子ガメたち
(撮影の後子ガメたちは海へとたどり着きました。)



 この他にも、アイゴ科やハタ科の魚の多くは種によって一定の月齢付近で産卵をし、スズメダイ科やテンジクダイ科の魚の中には大潮に孵化のタイミングをあわせて産卵をするものもいます。

 月の満ち欠けとそれに伴う潮汐の変化は、海の生き物たちにとっては大事な暦となっているのかもしれません。



 今回はサンゴの産卵と、月の満ち欠けをうまく利用している生物を少し紹介しました。

 次回は、実際に海に触れているもぐんちゅ(ダイビングサービススタッフさん)に聞いた話を、私なりにまとめて書きたいと思います。

2010/09/14

サンゴって何者?(その2)

サンゴの白化(はっか)と死
様々なストレスによって、サンゴと褐虫藻の共生関係は常に脅かされています。
今回は、サンゴにかかる様々なストレスをあげ、それによって引き起こされるサンゴの白化現象、さらにはサンゴの死についても勉強していきます。

写真右側は健康、中央部分は白化しており、左側は完全に死んで藻がついてしまっている。


サンゴに対するストレス
ストレスといっても、一般に我々が使うストレスとは違ったもので、サンゴの生存に直接的にかかわるマイナス要因のことを指します。

・物理的破壊
サンゴに最も大きなダメージを与えるのは、物理的な損傷、破壊です。これには主に台風などの波浪や他の生物によるものがあります。

・光
日光は、褐虫藻と共生しているサンゴにはかなり重要な要素です。海水の汚濁等による光量の減少は言うまでもなく、強すぎる日光もまた、サンゴ(と褐虫藻)へのストレスとなります。
紫外線によるダメージを防ぐため、浅瀬に生息するサンゴの中には紫外線吸収物質で体表を覆っているものもいます。一部のサンゴにブラックライトを当ててみると鮮やかに光りだすのも、このためであると考えられます。Yシャツが白いのと同じ原理ですね。

・温度
サンゴ礁海域の平均水温は、年間を通して25度程度と安定しています。実際、サンゴが最も好む水温は27度付近で、それより5度以上高い、または10度以上低いと大きなストレスとなり、白化(後述)の原因となることもあります。

その他にも、排水中に含まれる高栄養塩や農薬、大規模な淡水流入による塩分濃度の変化等がサンゴのストレスとなります。


浅場に色鮮やかなサンゴが多いのも、紫外線を反射する物質を作っているためであると考えられる。



水流によるストレス緩和効果
水流によりサンゴのまわりの海水が適度に循環すると、多くのストレスが緩和されます。
原因はまだはっきりとは分かっていませんが、水温と光に対するストレス耐性が、水流に比例して上がっているという実験結果も出ています。(Nakamura,van Woesik,2001)また、白化直後の回復率も水流に比例していることが分かっています。


サンゴの白化と死
サンゴが様々なストレスにさらされると、褐虫藻がサンゴから排出されてしまいます(サンゴがはき出すのか、褐虫藻が出ていくのか、褐虫藻がサンゴの中で死んでしまうのかははっきりわかっていません)。
もともとクラゲのように透明な体であるサンゴから褐虫藻がいなくなると、鮮やかな色は失われ、下の骨格が透けて白く見えます。これがサンゴの白化現象です。見た目はとても美しいのですが、サンゴにとっては危険な状態です。
白化=死と勘違いされがちですが、白化した状態からでも、うまくいけば褐虫藻が再びサンゴに帰ってきて、息を吹き返すことができます。しかし、褐虫藻の提供してくれる栄養を失ったサンゴはそう長くは生きられません。いわば白化はサンゴの瀕死の状態といったところでしょうか。
(白化してから生きられる期間は、種によってまちまちで、はっきりはわかっていません。)
1998年には、世界的なサンゴの白化が起こりました。この時に沖縄では60パーセント以上のサンゴが影響を受けました。
この大規模な白化現象は、エルニーニョ・南方振動(貿易風の弱体化に伴い海流が変化する現象。またそれによって引き起こされる気候の変動)によるものであるとする見解が一般的ですが、はっきりした原因はわかっていません。



さて、なんだか硬い感じになりましたが、紫外線対策として作っている物質の働きにより蛍光を呈しているということを知り、はじめに思い浮かんだのはオワンクラゲとGFPでした。
どうやらオワンクラゲは紫外線対策として蛍光タンパクを作っているわけではないようです。生殖腺だけではとても防ぎきれませんしね。そもそも褐虫藻と共生関係にないか。
また別の機会に「光る生物たち」について触れたいと思います。



次回はサンゴの産卵について勉強したいと思います。



それにしても「白化」と「褐虫藻」は変換が出なくて大変でした。。。

2010/09/13

サンゴって何者?

サンゴ

沖縄の海には多様なサンゴが生息している

沖縄の海と聞いて、誰もが最初に思い浮かべるのは多くのサンゴと、それに群がる色とりどりの魚たちでしょう。

スキューバダイビングはもちろん、海水浴やスノーケリングでも、沖縄のサンゴの多様性を知ることができます。 ダイバーや漁師を中心とした保護活動がメディアで取り上げられることも多く、サンゴ礁の保護に対する関心も高まっています。


まず、サンゴの生態について知ったうえで、サンゴへのストレス、子孫を残すための工夫について勉強していきたいと思います。


サンゴは、一見して植物のようですが、実はクラゲやイソギンチャクと同じ刺胞動物(しほうどうぶつ)です。
刺胞というのは、毒針を備えている細胞のことで、イソギンチャクに触れて肌がかぶれたり、クラゲに刺されて痛いのもこの毒の効果によります。
一般にサンゴの持つ毒は弱く、触っても痛み等が出ないものがほとんどです。


造礁サンゴ(ぞうしょうさんご)
造礁サンゴとは、その名の通り、サンゴの仲間のうち、サンゴ礁を形成するものです。造礁サンゴは岩場などに定着し、石灰質の骨格を形成します。サンゴの「本体」は表面にのみいるわけです。
後に述べますが、造礁サンゴは褐虫藻(かっちゅうそう)といわれる藻類と共生し、昼間は触手を縮め、夜間に伸ばして流れてくるプランクトンを捕食しています。

ちなみに、「金、銀、珊瑚がザックザク」のサンゴは、深海に生息する宝石サンゴという種類(分類)です。
以下では、特に断らない限り「サンゴ」は「造礁サンゴ」を指します。

サンゴは触手を伸ばしてプランクトンを捕食している

サンゴと褐虫藻
サンゴは、褐虫藻といわれる藻類と共生しています。
サンゴが日当たりの良い一等地と、呼吸によって生じる二酸化炭素、その他の老廃物(アンモニア等)を提供し、その代わりに褐虫藻は光合成で作った栄養分と酸素を提供します。
サンゴの色が様々なのは、この褐虫藻の色に起因し、サンゴの種類によって共生する褐虫藻が違うため、種類による色の違いが生じています。
褐虫藻は、藻類とはいえ、渦鞭毛藻類(うずべんもうそうるい)という分類名をもち、自力で泳ぐことができ、体内に葉緑体をもつ原核生物(ミドリムシなど)の仲間であると考えられます。


サンゴと褐虫藻の共生関係は、サンゴへの(または褐虫藻への)ストレスで簡単に崩壊してしまいます。完全な細胞内共生をしているミトコンドリアや葉緑体とそれらを細胞内にもつ生物たちのように、サンゴと褐虫藻は細胞内共生をする進化の過程なのかもしれません。


次回はサンゴの白化と死について考えていきたいと思います 。